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函館家庭裁判所 昭和59年(少)289号 決定 1984年11月15日

少年 N・M子(昭和四四・九・二六生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、上磯郡○○町立○○中学校の三年生であるが、中学二年生当時の昭和五八年七月から家出を繰り返しては不良仲間と深夜まで函館市内の盛り場を徘徊したり、シンナー吸入や不純異性交遊を重ねるようになり、捜しに来た父に発見されて連れ戻されたり、家出により警察に補導されたりしても、その行動を改めようとはせず、昭和五八年一二月一〇日には友人のB子(当時一五歳)とともに家出し、昭和五九年二月一七日に警察に保護されるまでの間、毎日のように函館市内において素行不良の男子少年等に誘われるままその乗用車に同乗して深夜までドライブをしたり不純異性交遊を重ね、相手の男性から小遣銭をもらつたり、モーテルや相手の男性宅に宿泊するなどの放縦な生活を続けたもので、保護者の正当な監督に服さないばかりか、正当な理由がなく家庭に寄りつかず、かつ、不道徳な者との交際を続けていたもので、少年の性格、環境に照らし、将来、売春等の罪を犯す虞があるものである。

(法令の適用)

少年法三条一項三号イ、ロ、ハ

(処遇の理由)

1  少年は、二歳のときに父母が別居(その後協議離婚)して以来、父子家庭において養育されたが、父との情緒的交流が乏しかつたうえ、躾教育が不足していたことから、中学二年生のときの七月から前記のとおりの奔放な生活を繰り返すようになつたものであるところ、その後も昭和五九年三月に単独で約一〇日間、同年五月に友人とともに約一四日間それぞれ家出し、男友だちのところに泊まるなどしたため、当裁判所は本件により同年六月五日観護措置をとり、同月二九日、少年を試験観察に付すとともに在籍中学校の生活指導担当の教諭に補導委託をした。ところが少年は、その後しばらくの間は試験観察の経過も良好であつたが、次第に不良仲間とゴムのりを吸入したり、少年鑑別所で知り合つた女子少年と交際するなどの問題行動が始まり、同年九月二七日には再び家出し、同年一〇月一九日まで男友だちの家に宿泊して従前と同様の不良交友を重ね、さらに同月二六日からも三日間家出するなど、その行動は一向に改まらなかつたものである。

2  このような非行の態様、試験観察の経過及び少年の性格・行動上の問題点(少年は、葛藤に対する耐性に欠け、不良交友等に一時的な快楽や感情の発散を求める傾向にあり、健全な道徳観に不足していること、また、家庭に対する帰属感も乏しいこと)、保護環境等に照らすと、もはや社会内処遇によつて少年の矯正をはかることは困難であるというべく、少年の健全な育成のためには、少年を初等少年院に収容して従前の生活環境から切り離し、規律ある集団生活を通じて基本的な生活習慣を身につけさせるとともに、健全な道徳観の涵養をはかる必要があると認められる。

なお、少年は現在中学三年生であり、中学卒業後地元で就職することを希望していること、少年には保護処分歴がないことなどに鑑みると、少年に対する処遇としては、中学卒業時を一応の目途とする一般短期処遇課程において集中的な教育、訓練を施すのが相当であると思料し、別途その旨の処遇勧告をすることにした。

3  よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 二本松利忠)

昭和59年少第289号<省略>

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